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+ ゲラや図版原稿をしょって通った阿部さんの事務所「Leyden」の壁一面の書架にはグラフィックな本より活字の本が多かった。それもぜんぶ読み込まれた跡があって、このひとは本を「見る」だけじゃなくて「読む」のが好きなんだなあと思ったのを思い出す。阿部さんはいつも読むためのデザインを考えてくれたデザイナーさんで、章扉・大見出し・小見出しと、節目節目に新鮮な気持ちを呼び起こす演出をほどこし、活字を追うのに読者が集中してきたころにはすっとうしろにひいているようなデザイン、そのようにしつらえた本文を、新刊としての華やぎと品格をもったカバー・ジャケットで包んでくれた。書籍というものに不可欠な足し算と引き算をしっかりと身につけいて、長く手元におきたいような本造りをしてくれた。よく思い出すのは、スキャンする前の画像原版を頭にたたき込むように1点1点じっと手にとってみつめていたことで、いまじぶんがDTPをするようになってそのことの重要さが身に沁みる。コンピュータを使いだすとついディスプレイの上だけで考えるようになって原版を忘れてしまい思わぬミスをするものだけれど、工作舎のハウス・デザイナーとして出発し基本を身につけていた阿部さんは、コンピュータを駆使しても最終的な「本」の姿を見失わない根っからの書籍デザイナーだった。 リーフレットにまとまった仕事をみておどろいたのは、2004年スタートの大きなお仕事、いかにも阿部さんらしくのびやかでしかし一分のすきもない河出書房新社「奇想コレクション」の雰囲気が、工作舎から独立して事務所をかまえてすぐの作品「それゆけ茶人」(1993)でもうしっかりできあがっていたことで、はやくからじぶんのスタイルを確立していたことにあらためて感心する。お願いした本はどれも美しい仕上がりで、著者の先生方にもとてもよろこんでいただいたけれど、ことに「江戸の身体を開く」「明日は舞踏会」「ヘンリー・ダーガー」には、はっとするようなのびやかさがあったと思う。その後阿部さんは祖父江慎さん率いるコズフィッシュのメンバーとなって、河出書房新社「奇想コレクション」や講談社「ミステリーランドシリーズ」(第38回造本装幀コンクール展で文部科学大臣賞受賞)、竹書房「ディズニー・POOH」シリーズとスケール・アップしてゆかれたんだった。 + …阿部さんが若くして亡くなったことがただただいたましく、うっかりするとどっと悲哀の念にとらわれてしまう1年だった。年若いひとの死のもたらす打撃について、人にも聞き、文章でも読んできたけれど、これほどとはね。…単行本専門の小さな出版社の編集者たちは、個々じぶんの本だけに集中していて共同作業をすることもほとんどない。6年もかかったシリーズ「叢書メラヴィリア」の伴走者をしてくれた阿部さんこそが、じぶんの作品社時代の同僚だったのかもしれないなあと思う。楽しかった本づくりのあれこれや、阿部さんの物静かなやさしい笑顔、仕事となると確信をもってゆずらなかった芯の強さを思い出すにつけ、またナミダぽたりなんでありました。
by calico5
| 2006-08-22 00:44
| 出版・編集
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